サン・プルサン Saint-pourçain のワインとブドウ品種 サシー Sacy  - ワイン特集記事 –

Laurentローラン家のサンプルサンの白ワインとロゼワイン

サンプルサンというワインをご存知でしょうか。ロワール河最上流にあるワイン産地で、フランスの中央部に位置しています。日本ではそのワインを見かける機会は殆どありませんが、最近フランスで評価が伸びており、あちこちで見かけるようになりました。赤白ロゼワインがつくられています。

・古くから白ワインで知られている産地。
・地球温暖化で、ロワール河最上流域でもブドウが十分熟すようになった。
・ワインの品質と価格が十分見合う。
・意欲的な若い生産者がいる。
・2009年にAOCを取得し、法的に整備された。

注目を集めている理由はこんなところでしょう。この古くて新しいサン・プルサンについてご紹介します。

Saint-Pourçain-sur-Sioule の街並み
Saint-Pourçain-sur-Sioule の街並み

基本情報

場所はロワール河最上流域で、支流のアリエ川沿い。サンセールやプイィフュメといった著名なワイン産地よりもさらに登った位置で、樽材の産地としても有名なアリエ県にあります。ムーランとヴィシーの街に挟まれたサン・プルサン・シュル・シウール ( Saint-Pourçain-sur-Sioule )の街が中心に広がっています。現在19の村に、約650haのブドウ畑があり、辛口の赤白ロゼワインがつくられています。

ロワールのワイン産地の地図
右下の黒丸内がAOCサン・プルサン  引用:WIKIPEDIA

歴史

サン・プルサンのワインは非常に古くからその品質で知られていました。いつ頃からワイン造りが始まったかは定かではありませんが、川の水利を利用してワインが他の地域に「輸出」された記録が古くから残っています。特に、ロワール河にあるオルレアンを通じて、パリに運ばれていました。パリ王室の食卓に上がるワインとして知られ、カペー朝以降の歴代の王貴族達に愛されていました。さらにアヴィニョンにいたローマ法王達にも飲まれていたようです。当時ブルボネ地方に属していたこのサン・プルサンは、ブルボン朝の時代には、王室の「出身地」のワインとしてもパリで飲まれていました。いずれにせよ、中世から高品質なワイン産地として知られ、その白ワインはブルゴーニュワインなどと比肩されたのです。

フランス革命後、サン・プルサンを中心としたアリエ県には約8000haのブドウ畑がありました。この時期に書かれたアンドレ・ジュリアンの著作には、「アリエ県で主に栽培されているのはガメイ種で、品質は平凡。」「サン・プルサンの白ワインは素晴らしい」と書かれています。19世紀半ば以降、フランス全域に鉄道が敷かれたことでこの状況が大きく変わりました。それまでワインは主に水利を利用して輸送されていました。サン・プルサンのワインはロワール河や運河を利用してパリまで運ばれていたのです。鉄道の到来によって、南仏から安いワインが大量にパリに到着するようになりました。さらにボルドーやブルゴーニュの高級ワインも鉄道を利用してパリに到着するようになって競争が激化。アリエ県のワイン生産者達は大きな影響を受けました。そこに追い打ちをかけるように19世紀後半にフィロキセラ禍が重なったのです。仕方なくアメリカ品種とフランス品種のハイブリッドを植えたものの、ワインの品質に問題をきたし、20世紀初頭には、ワイン産地としてほぼ消滅してしまいました。大部分の農家は穀物の生産等、他の農業に転換しました。

僅かに残った生産者たちが1951年にAOVDQS格付けの« ヴァン・ド・サンプルサン=シュル=シウールVins de Saint-Pourçain-sur-Sioule » を獲得。1952年には協同組合をつくり、失った過去の栄光を取り戻すべく、再建を試みました。しかし、一度失った名声を取り戻すことは容易ではなく、困難な時代が続いたのです。1982年にワインの呼称がシンプルな、« サン・プルサン Saint-Pourçain » になったものの、格付けはAOVDQSのまま。この頃からAOC格付けへの昇格申請をはじめましたが、それが成就するには2009年まで待つ必要がありました。かなりの紆余曲折があったそうです。

現在約100軒のワイン農家(そのうち約20軒がワイン元詰め)と1つの協同組合がAOCサン・プルサンのワインを生産しています。生産量の半分以上が協同組合産です。

テロワール

アリエ川の西側に位置するこのワイン産地は、複雑なテロワールで構成され、ブドウ畑は一か所に固まっておらず、あちこちに点在しています。標高は250~350m。

サン・プルサンのブドウ畑 粘土石灰質土壌
サン・プルサンのブドウ畑 2)の粘土石灰質土壌

大雑把に3つのテロワールに分けるのが一般的です。

1) 花崗岩質や変成岩質の土壌
2) 粘土・石灰質土壌
3) 砂利・砂質土壌 この地方では、「Sables du Bourbonnais(ブルボネ地方の砂地)」と言われています。

1)は主にAOCの西側に広がっており、ガメイが植えられることが多いです。2)にはピノノワール、シャルドネやサシーが植えられることが多いです。3)も主にガメイです。

気候は大陸性気候と海洋性気候が交わる位置にあり、どちらの特徴も含みます。年間平均気温は約11.7度。年間降水量は約780㎜。年間日照量は1800時間を超えます。

ブドウ品種

約650haあるブドウ畑には、3分の2が黒ブドウ、3分の1が白ブドウが植わっています。ブドウ品種は、赤ワインはガメイとピノノワール。ロゼワインはガメイのみ。白ワインはシャルドネ、Sacy サシー(Tressalierトレサリエと地元では呼ぶ)、ソーヴィニオン・ブラン。

赤白ワインは混醸が「義務」です。単独品種ではAOC/AOPを取得できません
赤ワイン: ガメイ40~75%、ピノノワール20~60%。
白ワイン: シャルドネ50%~80%、サシー20~40%、ソーヴィニオン・ブラン10%以下。

AOCを取得して日が浅い産地ですが、複数の品種を混ぜる「義務」が問題となっていています。単独品種の場合、AOCサン・プルサンではなく、IGP Val de Loireとなります。複数の生産者が、単独品種の白ワイン、Tressalier IGP Val de Loireで成功しており、この単独品種のIGPワインの方が、混醸したAOCワインよりも価格が高いのです。ガメイとピノノワールを混ぜることが義務である赤ワインに対しても様々な議論がなされて当然でしょう。

AOVDQS時代は サン・ピエール・ドレ Saint-Pierre Doréという品種を白ワインに使用することが可能でしたが、AOC昇格時にはずされました。

ガメイ、ピノノワール、シャルドネ、ソーヴィニオンの4品種は世界的に有名な品種なので、ここではご説明しません。注目すべきは、地元でトレサリエ Tressalier と呼ばれている白ブドウ品種 Sacy サシーでしょう。フランスでは、このサン・プルサンと、シャブリのあるヨンヌ県のみで使用されています。シャルドネやアリゴテ、ガメイ等と共にグエ・ブランとピノの掛け合わせ。フランスの北東部、ヨンヌ県やその周辺が原産と言われていますが、サン・プルサンの生産者たちは、「トレサリエ(サシー)種は地元アリエ県が原産だ」と譲りません。この原産地問題はさておき、シャルドネに比べて樹勢が強いものの、病気が少なく、収穫が約1週間遅い特徴があります。単独品種で仕込まれたトレサリエは、フレッシュな果実味と爽やかな酸味、最後に残る僅かな塩味が特徴の白ワインです。以前は軽いだけのワインでしたが、地球が温暖化して十分に熟すようになったことや、醸造面での改善もあり、かなり興味深いワインを見つけることができるようになりました。生産者によっては、スパークリングワインにこの品種を使用しています。

Sacy種のブドウ図  
Sacy種  引用:WIKIPEDIA

まとめ

如何でしたか。サン・プルサンのワイン、どこかで見かけられたら是非お試しください。ボジョレーのような赤ワインもありますが、白ワインが要注目です。

参考文献 André Jullien “Topographie de tous les vignobles connus” (1816 & 1866)

ブドウ品種にご興味のある方は、次の記事を是非お読みください。

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