ロシア資本のジュラのドメーヌ・ガヌヴァ、ラングドックのプリウレ・ド・サンジャン・ド・ベビアンの行方

アレクサンダー・パンピアンスキー と プリウレ ド サンジャン ド ベビアン
左:アレクサンダー・パンピアンスキー 右:プリウレ ド サンジャン ド ベビアンのカーブ 画像引用:RVF

ロシアのウクライナ侵攻は、フランスワインの世界にも様々な影響を与えている。特に、ロシア資本が入るフランスのワイナリーは、大きな問題に直面している。ジュラのワイナリー、ドメーヌ ガヌヴァDomaine Ganevatもその1つ。自然派の巨匠と称され、そのワインは日本にも輸入されている。ロシアの新興財閥オルガリヒ、ドミトリー・パンピアンスキーDmitry Pumpyanskyの息子、アレクサンダー・パンピアンスキーがこのワイナリーを買ったのは2021年9月のこと。まだ半年前の話だ。

2022年3月9日、欧州委員会はロシアのオルガリヒ達をブラックリストに載せ、資産凍結を決めた。パンピアンスキー家もそれに含まれる。この件に関して、複数のフランスメディアが報じている。現段階では、オーナーのアレクサンダー・パンピアンスキーは、ワイナリーを売却するしかないようだ。しかし、売買の詳細な条件をこれから詰める必要があり、簡単な話ではない。不確定要素が非常に強い状況だ。

仏RVF誌に対して、「ワイナリーと12人の社員を守るために戦う。」とドメーヌ・ガヌヴァのジャンフランソワ・ガヌヴァは答えている。

ドメーヌ・ガヌヴァは、数世代続く家族経営のワイナリーだった。しかし、2021年9月ジャンフランソワ ガヌヴァの友人アレクサンダー・パンピアンスキーに売却された。「フランスのワイナリーの負担となっている書類作業に時間を割くのではなく、純粋にワイン造りに専念したい。」「ドメーヌ・ガヌヴァのオーナーではなくなるが、引き続きこのワイナリーでワイン造りを続ける。」「後を継ぐ予定だった娘が畑仕事に興味がない。」というのがジャンフランソワ・ガヌヴァの売却の動機だったようだ。ワイナリーの将来のため、外国資本に売却し、安定した経営を行っていく予定が、裏目に出た形だ。

アレクサンダー・パンピアンスキーは南フランス、ラングドックにもう一つワイナリーを所有している。プリウレ ド サンジャン ド ベビアンPrieuré de Saint Jean de Bébian。ラングドックを代表するワイナリーとして世界中に知られている。アレクサンダー・パンピアンスキーは2009年の買収後大規模な資本を投下し、醸造設備等を一新。ワインの品質も向上した。旧醸造施設を改築したレストランもミシュランの星を獲得している。こちらも地元の新聞によると、ワイナリーを売却するしかないようだ。

ジャンフランソワ・ガヌヴァとそのワイン
画像引用:LE PROGRES

2022年3月17日続報

情報が錯綜しているが、仏国営放送FRANCE3(フランシュ・コンテ地方)によると、スイスに住むロシア人資産家、アレクサンダー パンピアンスキーは、ドメーヌ ガヌヴァとプリウレ ド サンジャン ド ベビアンを資産凍結前に手放しているようだ。3月4日のこととされている。欧州委員会の制裁の可能性を感じ取り、3月9日の資産凍結の前に売却していた模様。その売却先は公表されていないが、「ワイン関係者ではない」という。

ブノワ ポンテュニエ Benoit Pontenierと ジャンフランソワ ガヌヴァは共同で会社を立ち上げ、2つのドメーヌを買い戻すことを画策しているようだ。ブノワ・ポンテュニエ は11年間プリウレ・ド・サンジャン・ド・ベビアンの社長をしており、2021年夏からはドメーヌ・ガヌヴァの社長も兼務している。しかし、仏RVFに、「ドメーヌの買戻しが可能かは全くわからない」とジャンフランソワ・ガヌヴァは話している。

アレクサンダー パンピアンスキーはワイン愛好家で、これまで長期に渡りジャンフランソワ・ガヌヴァ達と良好な関係を築き、今回のウクライナ侵攻にも反対しているようだ。しかし、資産凍結が解除された後、アレクサンダー パンピアンスキーが2つのドメーヌを買い戻す可能性が指摘されている。彼は自分の信用のできる人に売却したがっていたという。この場合、2つのドメーヌが長期に渡って不安定な立場に置かれるのは間違いない。

2023年12月追記

上記の2ドメーヌは既にフランス資本に戻っている模様。ジャン・フランソワ・ガヌヴァは ドメーヌのエノログである Jocelyn Broncardがオーナー。プリウレ ド サンジャン ド ベビアンは責任者をやっていたフランス人、ブノワ ポンテュニエ Benoit Pontenierが買収したようだ。

一方、2023年秋、フランスの司法当局は、アレクサンダー パンピアンスキー達を違法な資金洗浄の疑いで捜査に入っている。彼らがかつて所有していたワイナリーも捜査対象に含まれているようで、「終戦」まではもう少し時間がかかりそうだ。

参考文献 Le monde

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