
5月1日、フランスでは、愛する人、身近な人、親しい人にすずらんの花を贈る習慣があります。「すずらんの花を受け取った人には幸運が訪れる」と言われており、すずらんのブーケを手にした人をあちこちで見かけます。
この日は、誰もが森で摘んだすずらんを売ってよい日。子供から大人まで、即席すずらん売りが現れます。なかには、お釣りを一生懸命計算している子供がいたりして、とてもほほえましい光景です。
すずらんを5月1日に贈る習慣は、ルネッサンス期に始まりました。1560年5月1日、フランス王シャルル9世が母カトリーヌ・ド・メディシスと共にドローム県、ル・ドーフィネを訪れた時のことです。当地の騎士ルイ・ド・ジラール・ド・メゾンフォールが、庭で摘んだすずらんの花を国王に献上。彼は「すずらんは幸運をもたらします」と説明したようです。これに魅了されたシャルル9世は、その翌年から、宮廷の女性達にすずらんの花を贈り、これが習慣となりました。
すずらんで有名なフランス人に、歌手フェリックス・マイヨールがいます。19世紀末、ベルエポック期のパリでは、スーツ襟に椿の花を飾るのが一般的でした。しかし、フェリックス・マイヨールは椿を見つけられず、友人達から贈られたすずらんを襟に飾り初公演に挑んだところ、大成功。彼に幸運が訪れたのです。1895年5月1日のことでした。これ以降、すずらんの花は彼のエンブレムとなりました。

すずらんといえば、クリスチャン・ディオールを忘れてはなりません。彼はこの花をこよなく愛した人で、5月1日には彼のファッション工房で働く人達に、すずらんの花をプレゼントしていました。1956年に発売となった、すずらんの香りの香水ディオリッシモは、その上品で清楚、しかも可憐な香りで多くの人を魅了し続けています。「幸運と成功をもたらすラッキーフラワー」として、すずらんは彼のメゾンのエンブレムとなっています。

