幸せを運ぶフランスのすずらん

フランスで幸運を運ぶ花として知られる、すずらんの花束ブーケ、

5月1日はすずらんの日。この日、フランスでは、愛する人、親しい人、身近な人にすずらんを贈る習慣があり、「すずらんの花を受け取った人には幸運が訪れる」と言われています。4月中旬を過ぎると、お花屋さんにすずらんが並び始め、街では、すずらんのブーケを手にした人をあちこちで見かけます。

この5月1日は、誰もが道ですずらんを売ることができます。いろんな場所に、即席すずらん売りが出没します。親が見守る中、お釣りを一生懸命計算する子供のすずらん売りも、たくさん見かけます。子供の社会教育にもよさそうです。

5月1日すずらんを売るには、いくつかの決まりがあります
1 野生のすずらんであること。
2 売る量は少量。
3 他の花を混ぜず、すずらんのみ。根がついているものはだめ。包装禁止。
4 花屋の近くで売ってはいけない。
5 テーブルや椅子は出さない。
6 通行人や車の邪魔にならないようにする。
違反した場合は、250ユーロから600ユーロの罰金が課されます。

野生のすずらんは、地中海沿岸地域を除くフランス全土で見つけることができます。毎年、この時期は近くの森に行き、すずらんを摘むのを恒例にしている、という人もいます。森で摘んだすずらんを贈られたら、うれしさ倍増ですね。

野生のすずらんだけでなく、農家が栽培しているすずらんもあります。2022年仏農業省データによると、フランスのすずらん栽培の80%は、ロワール地方ナント周辺。穏やかで湿度がある海洋性気候が、すずらんの栽培に適しているそうです。フランスですずらんを買う人の31%は、花屋で購入しています。

さて、すずらんを5月1日に贈るという習慣はいつ始まったのでしょうか。その歴史は古く、ルネッサンス期にさかのぼります。1560年5月1日、フランス王シャルル9世が母カトリーヌ・ド・メディシスと共にドローム県、ル・ドーフィネを訪れた時のことです。当地の騎士ルイ・ド・ジラール・ド・メゾンフォールが、庭で摘んだすずらんの花を国王に献上。彼は「すずらんは幸運をもたらします」と説明したようです。これに魅了されたシャルル9世は、その翌年から、宮廷の女性達にすずらんの花を贈り、これが習慣となりました。

すずらんで有名なフランス人に、歌手フェリックス・マイヨールがいます。19世紀末、ベルエポック期のパリでは、スーツ襟に椿の花を飾るのが一般的でした。しかし、フェリックス・マイヨールは椿を見つけられず、友人達から贈られたすずらんを襟に飾り初公演に挑んだところ、大成功。彼に幸運が訪れたのです。1895年5月1日のことでした。これ以降、すずらんの花は彼のエンブレムとなりました。

19世紀末から20世紀のフランスの著名シャンソン歌手、フェリックス マイヨール Felix Mayol
すずらんを襟元につけたフェリックス・マイヨール 画像引用:France3

すずらんといえば、クリスチャン・ディオールを忘れてはなりません。彼はこの花をこよなく愛した人で、5月1日には彼のファッション工房で働く人達に、すずらんの花をプレゼントしていました。1956年に発売となった、すずらんの香りの香水ディオリッシモは、その上品で清楚、しかも可憐な香りで多くの人を魅了し続けています。「幸運と成功をもたらすラッキーフラワー」として、すずらんは彼のメゾンのエンブレムとなっています。

お菓子屋さんやチョコレート屋さんのショーウィンドーには、この時期すずらんの形のものが並びます。以前、すずらんの日を意識していなかった頃のこと。ホテルの朝食時、コーヒーと共にすずらんの形のチョコレートが出てきたことがありました。ちょうど5月1日のことでした。

ちなみにこのすずらんの風習は、ベルギー、スイスなどでも一般的だそうです。まわりの人に幸運が訪れますように、というこの素敵な風習、日本にも広がるといいですね。

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