フランスで最もポピュラーな季節菓子、ガレット・デ・ロワ の世界

ガレットデロワ galette des roi
画像引用:L’EXPRESS

ガレットデロワとは

新年を迎えたフランスは、ガレットデロワのシーズンになります。このお菓子は、フランスではとてもとてもポピュラー。切り株に似せたクリスマスケーキ(ブッシュ・ド・ノエル)、イースターのチョコレートと主に、フランス三大季節菓子と言ってよいでしょう。家族で集まって食べるだけではなく、クリスマス休暇明けの学校で、或いは仕事始めに職場で食べたりします。地方によってはシードルをあわせます。

一般的なガレットデロワは、アーモンドクリームとカスタードクリームを混ぜたフランジパンFrangipane を包んだパイ生地のお菓子で、中にフェーブ Fève(そらまめの意味)と呼ばれる小さなオブジェが入っています。ガレットの大きさは様々で、直径20~40㎝の円形が一般的ですが、四角いガレットデロワもあります。これを切り分け、隠されたフェーブFèveを引き当てた人が王冠をかぶり、その日の王様か女王様になれます。伝統的には、家庭で食べる際、一番年少者がテーブルの下に入り、切り分けたガレットを誰に配布するかを決めます。

フランスの総人口は約6700万人。彼らが毎年約3000万枚のガレットデロワを消費します。価格は、スーパーマーケットで売られる1枚約500円ものから、高級パティスリーの1枚5000円以上のものまで様々ですが、家庭で気軽につくれる自家製ガレットデロワのキットも売られています。

Paul ポールのガレットデロワ galette des roi
フランスでポピュラーな PAUL のガレットデロワ

ガレットデロワとフェーブ Fève の歴史

ガレットデロワは、2000年以上の歴史があります。当然のことですが、時代に伴って味も形も風習も変わってきました。多数の逸話も残っていますし、絵画にも描かれています。その一部をご紹介しましょう。

ヨーロッパでは、フェーブ Fèveをお菓子に隠し、切り分けて食べる風習が古くからありました。古代ギリシャ時代にはワインと豊穣の神:ディオニソスを祝う祭りがあり、来春以降の作物の豊穣を冬季に祈っていました。古代ローマ時代にも、農耕の神サトュルヌスを祝った祭りにこの風習を見つけることができます。この冬の習慣がキリスト教の中に吸収され、1月6日の公現祭(エピファニー)での習慣となりました。1月6日は、イエス・キリストの誕生を祝うクリスマスから12日後であり、東方の三博士とイエス・キリストが会った日とされています。ロワは「王」を意味するフランス語ですが、ガレットデロワのロワは通常「東方の三博士」の意味。こうしてキリスト教の行事の一つとしてヨーロッパ各地に定着していきます。

ガレットデロワ galette des roi

フランスでは14世紀頃にガレット デ ロワの記述があります。ガレットを切り分ける際に一人分残し、後から来た人、あるいは貧しい人に分ける風習がありました。その伝統は20世紀まで残っていたようです。当時は今のようなパイ生地のお菓子ではなく、丸いシンプルなパンでした。その後パリの宮廷に取り入れられ、パンからブリオッシュ生地となり、乾燥果実が付け加えられ、ガトーデロワ Gâteau des rois、或いはクーロンヌデロワ Couronne des Roisと呼ばれるようになります。これが現在南フランスで主流のガレットデロワの原型です。一方、17世紀には、アーモンドクリームやパイ生地菓子の技術がパリで広まり、これを用いたガレットデロワが発展していきます。この「パリのガレットデロワ」が次第にフランス全土の主流となっていくのです。1789年のフランス革命時には、ロワ「王」をイメージさせるこのお菓子は禁止され、「ガレット・ド・ラ・リベルテ Galette de la Liberté(自由のガレット)」として売られました。

ガレットの中に入っているフェーブ Fèveも時代とともに変わってきました。かつては本物のFève そらまめを使ったようですが、1874年以降陶器のフェーブが出現。その後、金属、プラスチックと様々な素材が出てきました。電子レンジが普及するようになった1980年代からは金属製はなくなり、陶器製がほぼ100%となっています。1980年代末から陶器に様々な着色がされて焼かれるようになり、カラフルなフェーブが一気に増えます。フランスではフェーブのコレクターをFABOPHILEといいますが、この時期からフェーブ・コレクターが急増しました。高級パティスリーではその年限定のオリジナル・フェーブを入れるところがあり、それを目当てに買う人もいます。フランス全土で毎年4000~5000の新しいフェーブがつくられるので、どんなコレクターでもそのすべてを手に入れることはできないでしょう。ガレットデロワの約半分はスーパー・マーケットで売られるため、価格競争の面から東南アジアで作られた安価なフェーブが多いのですが、高級パティスリーを中心に、今もフランスの鮮やかな陶器製フェーブを使用しているところがあります。ちなみにコレクター垂涎のフェーブとなると、1個約20万円で取引されたとか………。

ガレットデロワ用の フェーブ feves

ガレットデロワを食べる日程も変わってきました。伝統的には1月6日の公現節当日。しかし、1月6日が平日の場合家族が集まりづらいため、1965年の第二ヴァチカン公会議後は、クリスマスから2回目の日曜日となりました。これは1月1日後の最初の日曜日にあたり、2022年は1月2日、2023年は1月8日です。今もガレットデロワをこの宗教的な日程で食べる習慣がありますが、現在では12月中旬から1月末まで店頭に並ぶようになり、長い間楽しめます。特に1月上旬に食べる機会が多いです。フランスのお菓子業界は12月と1月の2ヶ月で年間売上の40%以上を稼ぎます。彼らにとっては重要なビジネスです。

ガレットデロワ galette des roi
高級パティスリーのガレットデロワ 画像引用:L’hotellerie restauration

ガレットデロワの種類

ガレットデロワには大きく2種類あります。パイ生地とフランジパンのガレットデロワが北フランスを中心に全体の4分の3以上を占め、ブリオッシュ生地に乾燥果実を乗せたガレットデロワは南フランスに集中しています。気温が高く、バターが溶けやすい南仏ではパイ生地よりもブリオッシュ生地が選ばれたようです。

南フランス の ガレットデロワ galette des roi
ブリオッシュ生地に乾燥果実を乗せた南フランスのガレットデロワ 画像引用:Ville de Marseille

さらに、各地方には独自のガレットデロワがあります。有名なものをいくつかあげましょう。

ダンケルクのガレットデロワ Galette des rois de Dunkerque

フランス北端にあるダンケルクのガレットデロワ Galette des rois de Dunkerqueは、ブリオッシュ生地をクリームで挟んだ菓子。砂糖を上からまぶしたものもあり、南仏のトロペジェンヌそっくりです。

ダンケルク の ガレットデロワ galette des roi
ダンケルクのガレットデロワ Galette des rois de Dunkerque 上から砂糖をまぶしていないヴァージョン  画像引用: la voix du nord

フランシュ・コンテのガレットデロワ Galette des rois Franc-comtoise

スイスと接しているフランシュ・コンテ地方のガレットデロワ Galette des rois Franc-comtoiseは、シュー生地をベースにフルール・ド・オランジュで香りづけしており、アーモンドクリームは使われていません。11世紀にブザンソンで始まったこのガレットデロワは、ガレット・コントワーズ Galette Comtoise、或いはガレット・ビゾンティーヌ Galette Bisontineとも呼ばれます(Bisontinはブザンソンの意味)。

フランシュコンテ 地方の ガレットデロワ galette des roi
ガレット・コントワーズ Galette Comtoise  画像引用:France3 Bourgogne-Franche-Comte

ブルターニュのガレットデロワ Galette des rois Bretonne

フランスの西端にあるブルターニュのガレットデロワ Galette des rois Bretonneは、郷土菓子ブルターニュ風サブレを大きくしたもの。アーモンドクリームは一切入りません。小麦粉、バター、砂糖、卵等でつくられます。

ブルターニュ の ガレットデロワ galette des roi
ブルターニュ風ガレットデロワ Galette des rois Bretonne   画像引用:Bretagne.com

ノルマンディのガレットデロワとヌロール Nourolles

ノルマンディ地方には、公現節のヌロール Nourolles de l’Epiphanieといわれるガレットデロワがあります。クラシックな円形のブリオッシュに Fèveを入れてつくります。これもアーモンドクリームは入りません。
これ以外にもノルマンディ風ガレットデロワ Galette des rois à la Normandeがあり、外見は一般のパイ生地のガレットデロワと同じですが、中にノルマンディ特産のりんごや、果実の蒸留酒&リキュールを加えます。

ノルマンディの ガレットデロワ galette des roi
ノルマンディーの公現節のヌロール Nourolles de l’Epiphanie  画像引用:Paris-Normandie

ロワレの ピティヴィエ Pithiviers

フランス中央部、ロワール地方のロワレ県にはピティヴィエ Pithiviers (Pithiviers Feuilleté パイ包みのピティヴィエ)という伝統菓子があります。その外見はパイ生地のガレットデロワと一緒。一般のガレットデロワはアーモンドクリームとカスタードクリームからつくられるフランジパンを挟みますが、ピティヴィエはアーモンドクリームだけです。現在ピティヴィエは 1月の公現節 だけでなく1年中つくられるようになり、フランス全域の高級パティスリーから一般のパン屋、スーパー・マーケットまで、あらゆるお店で見かけるようになりました。公現節の頃のピティヴィエには、フェーブが入っているものもあります。因みにピティヴィエ Pithiviersという名称は、ロワレ県の街の名前。かつてジャンヌ・ダルクが解放したことで有名なオルレアンの傍です。

ロワレの ピティヴィエ pitiviers
ピティヴィエ Pithiviers  画像引用:La Manche Libre

ベアルンのガレットデロワ: ガルフ Garfou

スペインに近いフランス南西地方ベアルンのガレットデロワ Galette des rois Béarnaiseは、ガルフGarfouと呼ばれています。ブリオッシュ生地に、アニス等で香りづけがされ、他のガレットデロワとは明瞭に香りが異なります。

ベアルン の ガレットデロワ galette des roi
ベアルンのガレットデロワ Galette des rois Béarnaise、ガルフ Garfou  画像引用:L’Agence de l’Alimentation Nouvelle-Aquitaine

フランス大統領のための「エリゼ宮のガレットデロワ Galette des rois de l’Elysée」

最後に「フランス大統領のガレットデロワ」をご紹介します。これは毎年1月6日にフランスのパン・製菓職人組合がフランス大統領に贈る3個のガレットデロワで、1つが直径1.2mの巨大なサイズ。「エリゼ宮のガレットデロワ Galette des rois de l’Elysée」と呼ばれます。製作する職人は毎年異なり、「選ばれるのはその職人にとって名誉なことだが、失敗が許されないストレスな仕事」だとか。贈られたガレットデロワは招待された人達や、パン・製菓職人組合の人達と一緒に食べることになっています。

フランス大統領 の ガレットデロワ galette des roi de presidant
エリゼ宮のガレットデロワ Galette des rois de l’Elysée  中央でナイフを持つのがエマニュエル・マクロン大統領 画像引用:Le Dauphine

この巨大なガレットデロワにはフェーブFèveが入っていません。「フランス共和国の大統領は国王のような強い権力を持つが、国王ではない。フランスは国王のいない共和制の国である。大統領夫人も女王ではない。」というのが真面目な理由です。ここではロワ Roi は東方の三博士ではなく、国王の意味になっています。1975年 ジルカールデスタン大統領の時に始まったこの伝統は、歴代のフランス大統領に引き継がれています。フランス革命で国王を追い払ったフランスならではでしょう。

最近は日本でもガレットデロワを入手することができるようになりました。是非この機会にお試しください。

にほんブログ村 グルメブログ フード&ワイン(グルメ)へ
error:Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました