フランスには有名な牡蠣名産地がいくつかありますが、その筆頭格にブルターニュ地方のカンカル Cancaleがあります。晴れた日には対岸のモン サン ミッシェルを一望できる小さな港町は、古くからカキで知られ、王族達がカンカルの牡蠣をパリまで運ばせ、好んで食べた逸話が残っています。現在カンカルは、極少量生産ですが、平牡蠣の町として知られています(平牡蠣の詳細な説明は「フランス牡蠣の世界1、ポイント整理から」をご覧ください)。平牡蠣(ヒラガキ、ヨーロッパヒラガキ)はフランス在来種で、かつてフランス全域で生産されましたが、今は絶滅寸前。現在でも供給は不安定で、高級なレストランでもあまり見かけません。しかし、この平牡蠣を通年食べることができる市場がカンカルにはあり、観光の目玉にもなっています。
そして、この街には「スパイス界の頂点」「スパイスの法王」と言われるロランジェの本店もあります。フランス料理やガストロノミーに興味のある方には、特別な場所と言えるでしょう。
カンカル Cancale
35260、Ille-et-Vilaine県、Bretagne地方
パリから車で約4時間半
鉄道の場合、サンマロ Saint-Malo駅からバスあり。
カンカルは人口約5千人の小さな港町。カキ市場は海沿いにあり、10軒程の売店が並んでいます。
カンカル 牡蠣市場 Marché aux huîtres – Cancale
1 Rue des Parcs, 35260 Cancale
年中無休
https://www.marcheauxhuitres-cancale.com/
生産者直売で牡蠣を買って持ち帰ることもできますし、その場で殻を開けてもらい食べることもできます。12個の生牡蠣が並んだプレートが用意されていて、真ん中にレモンが置けるようになっています。今回は6個の平牡蠣と6個の真牡蠣を選びました。
購入時の牡蠣職人の説明です。
「マガキ真牡蠣とヒラガキ平牡蠣の違い? 外観も違うが、殻を開くと中の色が全然違う。真牡蠣の身は白と黒だが、平牡蠣の身は白と薄い茶色。平牡蠣はノワゼットの香りがあり、歯ごたえのある味だ。」
「平牡蠣の方が採ってからの賞味期限が短い。すぐ食べないと美味しくない。」
「うちの平牡蠣は天然ものだ。真牡蠣は養殖もの。天然の平牡蠣は大きくなるのにより時間がかかっているよ。」
「レモンは真牡蠣にかけてくれ。平牡蠣はレモンを使わず、そのまま食べて味わってほしい。」
とのことでした。
左が日本原産の真牡蠣、右がフランス在来種の平牡蠣
実際に試食してみると、真牡蠣は濃厚で、肉厚な味。一方の平牡蠣は繊細な軽い味わいで、コリコリした食感。塩味をより強く感じます。どちらも牡蠣ですが、香味共にかなりの違いがあります。日本人だからかもしれませんが、日本原産の真牡蠣の方が食べ応えがあって美味しかったです。
カンカルでは、現在4000~5000トンの年間生産量のうち、約700トンが平牡蠣だそうです。
2019年11月、カンカルの牡蠣養殖は、フランス政府の無形文化遺産 Patrimoine culturel immatériel françaisに登録されました。これはユネスコの無形文化遺産 Patrimoine culturel immatériel de l’Unescoへの第一歩になります。
写真:右がカンカル名物の大型天然平牡蠣 ピエドシュバル Pied de cheval。左のNo3の平牡蠣と大きさが異なることがわかる。
カンカル教会前に立つ銅像。牡蠣を洗う2名の女性が印象的。
さて、カンカルには「スパイスの法王」と言われるロランジェの本店があります。高級フレンチレストランの料理人達から絶賛されている彼のスパイスは、胡椒だけで約30種類。普通に量販店で流通しているスパイスとは全く異なった香りで驚かされます。お店では様々なスパイスの香りを嗅がせてくれます。
ロランジェのスパイスは、パリやサンマロのお店でも入手可能です。
エピス・ロランジェ Épices Roellinger – Cancale
1 Rue Duguesclin, 35260 Cancale
ロランジェのスパイス店の傍にはグラン ド ヴァニーユ GRAIN DE VANILLEがあります。ヤニーク・ゴーティエとロランジェ家のパティスリー&サロン ド テ。極上の菓子がその場で食べられます。
グラン ド ヴァニーユ Grain de Vanille
12 place de la Victoire 35260 Cancale
ブルターニュ地元名物菓子の1つ、ファーブルトン far Breton。
グラン ド ヴァニーユ Grain de Vanilleでも販売されているアル・グワステルの記事
情報ソース
France3
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