アルザスワイン の甘さ・残糖表示 2021年ミレジムからのエチケット表示義務化とその問題点

以前から議論百出となっていたアルザスワインの甘さ表示。生産者毎の独自の基準がエチケットや裏エチケットに表示されていましたが、2021年ミレジムからは、次の表記が義務となりました。

Sec セック : 残糖 4 g/L 以下 
Demi-sec ドゥミ・セック : 残糖 4 g/L~12 g/L 
Moelleux モワルー : 残糖 12 g/L ~ 45 g/L  
Doux ドゥー : 残糖 45 g/L 以上

そして下記の「目盛り」が裏エチケットにつけられます。これでどのぐらいの甘さなのかが解るようになっています。

アルザスワインの甘さ・残糖表示義務の裏エチケット
画像引用:DGCCRF

かなり昔からこの裏エチケットの統一表記の話は議論されてきましたし、様々な試みがなされてきました。最終的に、現行の欧州規則のコピーとなりました。「隣国ドイツ市場を含む輸出が大きい割合を占めるアルザスは欧州規則が重要」という幕引きでした。

アルザスの生産者たちはどちらかと言えば今回の決定に好意的なようですが、問題も指摘されています。それは残糖 45 g/L以上のVin Doux ヴァン・ドゥーの表記です。フランスで一般にVin Doux ヴァン・ドゥーといった場合、南仏のVin Doux Naturel (VDN) ヴァン・ドゥー・ナチュレルを指します。バニュルスやミュスカ・ド・ボ-ム・ド・ヴニーズ等ですね。過去アルザスワインにはあまり使用されておらず、イメージにあわないのです。これまで残糖 45 g/L以上のアルザスワインはVin Liquoreux ヴァン・リコルーと呼ばれてきました。実際ヴァン・ドゥーではなくヴァン・リコルーにするべきか議論されたものの、採用されなかったようです。

上記の「目盛り」のない口頭でのやりとりでは、「Demi-sec ドゥミ・セックとMoelleux モワルーのどちらが甘いか?」「Moelleux モワルーとDoux ドゥーのどちらが甘いか?」。感覚的に、フランス人達にも明瞭ではないようです。今回の決定が消費者に浸透するにはある程度時間がかかると見られています。

もう一つは、Cremant d’Alsaceクレマン・ダルザスやChampagneシャンパーニュのようなスパークリングワイン類とは甘さ表示と異なる点です。

Brut nature ブリュット・ナチュール: 残糖3 g/l以下  
Extra brut エクストラ・ブリュット:残糖 0 g/l ~6 g/l  
Brut ブリュット: 残糖12 g/l以下  
Extra-secエクストラセック : 残糖 12 g/l~17g/l  
Sec セック : 残糖 17 g/l ~32 g/l  
Demi-sec ドゥミ・セック : 残糖 32 g/l ~ 50 g/l  
Doux ドゥー: 50 g/l以上

アルザスにせよ、シャンパーニュにせよ、Sec セック表示のスパークリングワインは殆ど生産されていません。フランス語でSecセックといえば辛口を指すにもかかわらず相応の残糖があり、消費者が混同するためです。一方Demi-sec デュミ セックはかなりの量が生産されています。スティル・ワインとスパークリングワインでは残糖の感じ方にかなりの差があるのですが、2倍以上の残糖量の差があり、この点も問題として残っていることも事実です。

以上、いくつかの問題はありますが、これまで甘いのか辛いのか解りづらかったアルザスワイン、その普及の一助にはなるかなと思います。

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