シャンパーニュ・クリュッグ KRUGの新醸造所が完成

シャンパーニュの最高峰といわれるメゾン クリュッグが、モンターニュ ド ランスにあるアンボネイ村Ambonnayに新しい醸造所を完成させた。2024年春、報道機関に公開された。

メゾン クリュッグ KRUGの6種類のシャンパーニュ。左からコレクション、ミレジメ、グランキュベ、ロゼ、クロデュメニル、クロダンボネ

クリュッグがリリースする6種のシャンパーニュ。左から、コレクション Collection、ミレジム Millésime、グラン キュベ Grande Cuvée、ロゼ Rosé、クロ デュメニル Clos du Mesnil、クロ ダンボネ Clos d’Ambonnay。画像引用:KRUG


1843年創業のクリュッグ KRUGは、ランスに本拠地があるシャンパーニュ メゾン。樽発酵・樽熟成したワインから生み出される濃厚なシャンパーニュは、世界中で非常に高い評価を得ている。クロダンボネやクロデュメニルといった単一畑のシャンパーニュは、最も高価なシャンパーニュとして知られている。1999年、シャンパーニュ最大のグループ、LVMH モエ ヘネシールイ ヴィトン グループ傘下に入った。現在約20ヘクタールの自社畑を所有するだけでなく、約100軒の農家からブドウ等を購入。年間約90万本のシャンパーニュを生産している。

クリュッグは1843年の創業以来、ランス市内 Coquebert通りの本拠地で醸造・熟成、出荷までを行っていた。この建物は大都市となったランス中心部にあり、ブドウ畑からは非常に離れている。しかも手狭になっていた。約4000個の小樽(205リットル)が4段積みされている熟成庫は壮観だが、高所での作業の危険性が以前から指摘されていた。また、樽熟成庫に温度・湿度調節機能がなく、地球温暖化が進む現代では、思うような醸造・熟成ができなくなりつつあった。

クリュッグKRUGの旧醸造熟成庫。205リットルの古い小樽が積みあがる。

小樽が4段に積まれる旧醸造熟成庫。画像引用:KRUG


新しい醸造所は、アンボネイ村のクロダンボネ Clos d’Ambonnay内にあり、ここで樽発酵・樽熟成を行い、シャンパーニュをボトリングする(ティラージュTirageまでの工程を行う)。その後、ランス市内の本拠地にボトルを運び、地下で瓶内2次発酵を続け、出荷までの全ての作業をこれまでと同様に行う

クリュッグ KRUGの新しい樽発酵熟成庫、多数の古い小樽が2段に積まれている

新しい醸造熟成庫。計4000個の小樽が2段積みで収納可能。 画像引用:Terre de vins


新しい醸造所は、上から見て「H」の形をしており、両翼にある2つの樽熟成庫が計8つの部屋に分かれている。それぞれの部屋が独立して温度・湿度の調節が可能だ。約4000個ある205リットルの小樽は2段積みで収納可能となり、作業員の安全と負担軽減に配慮した設計になっている。

クリュッグKRUGのアンボネイ村の新醸造所。クロダンボネの塀の中に建てられ、ブドウ畑の隣にある

自社畑クロダンボネの塀の中に建てられた新しい醸造所全景 画像引用:Terre de Vins


新しい醸造所の名前は「ジョセフ Joseph」。創業者ヨハン・ジョゼフ・クリュッグ Johann-Joseph Krugへのオマージュだ。

アンボネイ村は力強いピノノワール種で知られており、クリュッグは1843年の創立以来、アンボネイ村のブドウを購入し続けている。メニル村の単独畑でつくられるクロデュメニル Clos du Mesnil以外、過去全てのクリュッグのシャンパーニュにはアンボネイ村のワインが含まれる。それだけアンボネイ村との繋がりが深いという。ピノノワールがアッサンブラージュの中心であるクリュッグらしい話だ。

今回の醸造所移転は、180年の歴史を誇るクリュッグとしては、過去最大の変化だろう。「醸造所移転によってクリュッグのスタイルが変わることはない」、クリュッグ側はコメントしているが、実際にどうなっていくのかは時間が経ってみないとわからない。2024年秋収穫のブドウがシャンパーニュとしてリリースされるのは2030年以降。熟成期間が短いグランキュベですら約7年の瓶熟成が行われるからだ。

2024年より稼働するクリュッグKRUGの新しい醸造所とクロダンボネのブドウ畑

自社の単独所有畑 クロダンボネから見た新醸造所 画像引用:Terre de Vins

参考文献

Krug     Terre de vins Figaro

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