パリで人気のレバノン アイス バシール BACHIR

パリのレバノンアイスクリーム、バシール Bachirのカップアイス、ピスタチオと生クリームのトッピング

気温が高くなると、まず食べたくなるのはアイスクリーム。老若男女に大人気で、スーツ姿の紳士やお洒落マダムも、アイス片手に歩いています。パリにたくさんあるアイス屋さんのうち、ひときわ人気を集めているのが、1936年創業のレバノンアイス専門店バシール BACHIRです。

バシール発祥の地は、ベイルートから車で約30分、標高1000mに位置する山あいのBikfaya村です。バシール兄弟とべジャ二姉妹が結婚し、その4人が家の裏でアイスクリームを作り始めたのが1936年のこと。そのアイスは評判を呼び、お店は単にアイスクリームを食べる場所だけでなく、レバノン人達の交流の場にもなり、彼らのビジネスは大きく発展しました。現在レバノンで50店舗を持つまでに成長しています。

パリのレバノンアイスクリーム、バシール Bachirの看板、1936年レバノン創業と書かれている

フランスで育った彼らの孫が、バシールアイスの美味しさを知ってもらいたいと、フランス初のレバノンアイスクリーム専門店をパリにオープンしました。2017年のことです。素材にこだわった、100%オーガニックのアイスは大人気で、2020年には2店目ができました。現在、パリ3区と18区に2店舗あります。季節になると、パリ ギャラリーラファイエットで期間限定のポップアップストアがオープンします。

パリのレバノンアイスクリーム、バシール Bachirの3つの大きさのアイスクリーム
画像引用:Bachir

注文の仕方がわかりづらいので、説明します。まず最初に、サイズ種類を決めます。サイズは、スモール、ミディアム、ビッグの3種類ありますが、スモールでも十分大きいので、ご注意ください。種類は、クラシックあるいはスペシャリテのアシュタAchta。クラシックは、薔薇の花、レモン、アプリコット、ブラックベリー、いちご、バニラ、ピスタチオ、アーモンド、ミルクチョコレート、ダークチョコレート、コーヒーの計11種類。アシュタAchtaは、フルールドレというミルク、オレンジフラワーウォーター、マスティックという樹液からつくられているとのことで、未知との遭遇です。

さて、初体験のレバノンアイス、私は、スペシャリテのアシュタ、そしてクラシックの薔薇の花のアイスを頼みました。追加料金なしでつけられるという細かく砕いたピスタチオ、トッピングの生クリームもお願いしました。美しいビジュアル、食べたことのないレバノンアイスに期待は高まります。

パリのレバノンアイスクリーム、バシール Bachirのトッピングのピスタチオ
画像引用:Bachir

スペシャリテのアシュタを食べて、驚きました。少し粘り気があり、もちっとしています。ミルクの味がしっかりあり、ウッディ―、生姜、ミントのような風味を感じました。他では経験したことのない味わいです。薔薇の花のアイスは、上品な薔薇の香りがふわりと漂い、軽やかで、優雅な気分になりました。砕いたピスタチオの食感も心地よく、満足感があります。

スペシャリテのアシュタAchtaとは、いったい何でしょうか。原料は、フルールドレ Fleur de lait、マスティック Mastic、オレンジフラワーウォーターと説明されました。サレップパウダー Salepも入っているようです。フルールドレ、マスティック、サレップパウダー、いずれも聞いたことがありません。

フル―ルドレは、牛乳からつくる湯葉のようなもの。牛乳を温め、冷やすと表面にできる皮のことで、マスカルポーネのようなテクスチャ―。昔はお菓子づくりに使われていましたが、長らく忘れ去られた存在でした。脂肪分が少なく栄養価が高く、お菓子に独特な味わいとなめらかさを与えます。2022年には、ある会社がフルールドレを商品化し、2023年のSIRHA国際外食産業見本市で銀賞を受賞しました。ティエリー マルクスなどの星つきシェフ、パリのホテル クリヨンなどでも使われています。

マスティックは、ピスタチオ科の低木から採取される樹液。主にギリシャのキオス島で生産されています。繊細で樹脂のような風味があり、菓子、料理に使われています。消化促進、抗菌作用もあるとのこと。

サレップパウダーは、サレップという蘭の塊茎から作られる粉。グルコマンナンという粘性成分があり、菓子や飲み物に独特の粘り気とクリーミーな質感を与えます。アイスに使うと、アイスが溶けにくくなります。かつてのオスマン帝国領域で伝統的に使われていて、消化器や呼吸器系に効果があるとのこと。トルコでは、牛乳にサレップの粉を混ぜた温かい飲み物が人気で、この飲み物自体サレップと呼ばれ、寒い季節に親しまれています。日本の葛湯みたいなものでしょうか。

2000年代初頭、日本で流行った、伸びるトルコアイスを思い出しました。トルコアイス、本場トルコではサレップパウダーが使われていますが、日本では入手が難しく、また高価ということもあり、澱粉や増粘多糖類が使われていたようです。

パリのレバノンアイスクリーム、バシール Bachirの店内

Bachirのレバノンアイスを食べたら、味わったことのないフレーバーが口の中に広がり、まだ見ぬレバノンに心が旅立ちました。アイスクリームでレバノン気分。いつの日か、現地でレバノンアイスを食べてみたくなりました。

レバノンアイス屋バシールの成功を受け、パリでは2022年に全く別のレバノンアイス専門店バルティス Balthisがオープンしました。レバノン出身のいとこ同士が開いた店で、こちらのアシュタにはローズウォーターも入っているとのこと。

レバノンみやげのお菓子を何度かもらったことがあります。ピスタチオなどのナッツ類、はちみつの自然な甘味を生かしたお菓子は、いずれも繊細で優しい味わい。とても美味しくて、好印象でした。

当分、レバノンから目が離せそうにありません。

バシール BACHIR
MONTMARTRE店
7 Rue Tardieu, 75018 Paris
RAMBUTEAU店
58 Rue Rambuteau, 75004 Paris
Galeries Lafayette Le Gourmet
35 Boulevard Haussmann, 75009 Paris
期間限定ポップアップストア 2024年5月15日から9月10日まで

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